怪談会 序


   序
つたふるところ怪異くわいいしよおほくは徳育とくいくのために、訓戒くんかいのために、寓意ぐういだんじて、勸懲くわんちやうとなすにぎず。けだをしへのために、鬼神きしんわづらはすものなり人意じんいいづくん鬼神きしん好惡かうをさつむや。さつせずしてこれふ、いづれも世道せだう執着しうぢやくして、眞相しんさうあやまつなり。く、こゝしるすものはみな事實じじつなりと。ひとはしるもの汽車きしやず、ぶものとりず、およぐものうをず、なるもの廂髮ひさしがみざるゆゑて、ちくらがをきとなすなかれ。
 泉 鏡花



青空文庫より引用